「飛行機に乗るのがちょっと怖い・・・」
「最近のニュースを見て、安全な席ってどこ?」
この記事では、元CAの視点から飛行機で少しでも安全に乗るためのヒントをお届けします。
まず結論から言えば、「この座席が一番安全!」と断言できる席は存在しません。
でも、過去のデータや現場の感覚から、生存率が高い傾向にある席や、安心して乗るためのコツは確実に存在します。
本記事では、その具体例と理由、そして飛行機の安全性をわかりやすくお伝えします。
飛行機で安全な座席は?結論「ここが絶対安全!」な席は存在しない
「飛行機で一番安全な席ってどこ?」この質問をよく受けますが、実は「この席が絶対に安全」という正解はないというのが正直なところです。
なぜなら、飛行機事故にはさまざまなパターンがあり、以下の要因によって大きく変わるからです。
- 離陸・着陸時なのか航行中なのか
- 火災や煙の広がり方
- どこに衝撃が加わるか
- どの出口が使えるか
航空専門家も、飛行機の安全な席については「事故の力学による」「状況次第」という見解を持っています。
事故の状況によって安全な席は変わる
例えば、前方から地面に激突したケースでは、後方の乗客が助かる可能性が高くなります。
逆に、後方部分が真っ先に衝撃を受けた場合は、前方や中央が助かりやすいことも。
また、燃料タンクがある翼の付近では火災のリスクも考えられます。
脱出が遅れると煙や熱で生存が難しくなるため、「生き残れるかどうか」は、座っている位置だけでなく、その後の避難行動や機内の状況にも大きく左右されるのです。
そもそも飛行機は世界で最も安全な乗り物
ここで重要な事実をお伝えします。
飛行機は私たちが使うあらゆる交通手段の中で、最も安全な乗り物なんです。
具体的な安全性のデータ
オランダの専門誌「航空輸送管理ジャーナル(JATM)」の論文によると、飛行機の安全性は世界的に年々向上し続けていて、2018~2022年に民間機の飛行で死亡する確率は、世界全体で1370万回の搭乗につき1回の割合という結果が出ています。
昔の飛行機の安全性は、1968~77年には35万回の搭乗につき1回だったのですが、2008~17年には790万回につき1回と大幅に減ってきているんです。

自動車で死亡する確率が103分の1と言われているので、飛行機が安全な乗り物ということが分かります。
また、アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)のデータによると、2001年~2017年に起きた航空事故の94%で生存者がいたことも分かっています。
毎日、何千機もの飛行機が世界中を飛び回り、そのほとんどが無事に目的地へ到着しているという事実を理解するだけでも、過度な心配は不要だとわかります。
過去の事故データから見る「比較的安全な席」の傾向
「事故の状況によって変わる」とはいえ、過去の航空機事故データからは、いくつかの傾向が見えてきます。
後方席は比較的生存率が高い
座席 | 死亡率 |
前方 | 38% |
中央 | 39% |
後方 | 32% |
アメリカ「TIME誌」の1985年~2000年の事故データでは、後方座席が死亡率が低いという結果がでました。
さらに詳しく分析すると
- 後方中央席の生存率:72%(死亡率28%) ← 最も高い
- 中央通路側席の生存率:56%(死亡率44%)← 最も低い
後方中央席の生存率が最も高いということが分かりました。
後方中央席が最も生存率が高い理由
普段は人気のない後方の真ん中の席ですが、実は左右に人が座ることで「人間クッション」の役割があり、衝撃を和らげる効果があると考えられています。
非常口から5列以内の席も生存率が高い
また、イギリスのグリニッジ大学の研究では、「非常口から5列以内の席に座っていた人の生存率が最も高かった」という結果が出ています。
これは墜落の衝撃よりも、その後の火災や煙による窒息が致命傷になることが多いため、「早く逃げられる位置」つまり非常口に近い席に座っている方が、生存率が高まるということが言われています。
通路側・窓側・中央席それぞれの特徴
座席 | 特徴 |
通路側 | 🔰すぐ動けるため避難しやすい ❌落下物や飛んできた破片に当たりやすい |
窓側 | 🔰外が見える安心感がある ❌脱出時に他の人を待つ必要があり、脱出が遅れるリスク |
中央席 | 🔰両側の人がクッションになり衝撃を和らげる ❌動きにくく窮屈 |
どの席にもメリット・デメリットがあることを知っておくと、座席選びの際の気持ちも軽くなるでしょう。
事故の原因別「選ぶべき席」の考え方
飛行機事故と一口にいっても、その原因や状況はさまざま。
だからこそ、「どういうタイプのリスクを避けたいか」で、選ぶ席の基準も少し変わってきます。
ここでは、主な事故パターンごとに「どんな席を選ぶのがベターか?」を元CA目線とデータの両方から解説していきます。
火災・煙を想定した場合におすすめする席
- 燃料タンクのある主翼付近を避ける
- 非常口から5列以内の通路側
- とにかく早く脱出できる位置
アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)によると、死亡原因の約7割は火災や煙の吸引によるものと報告されています。
また、事故後は90秒以内の避難が命を分けると言われているので、いち早く機外へ脱出するというのがポイントとなります。
墜落の衝撃を想定した場合におすすめする席
- 後方席の中央席
墜落の最初の衝撃”を想定した場合、後方席の中央が比較的安全とされています。
というのも、前方は衝撃を一番に受けやすく、中央部は燃料があるため火災リスクが高いからです。
「一番人気がなさそうな席」ですが、万が一の衝撃に備えるなら後方中央席を選んでおくという手もあります。
乱気流・快適さを重視する場合におすすめする席
- 翼の上あたりの中央部
事故ほどではないけれど「揺れが苦手」「飛行機が怖い」というあなたには、翼の上あたりの席がおすすめです。
飛行機の中央部は重心に近くバランスが取れている揺れが少ない傾向にあります。
飛行機に乗る前・乗った後にできる安全対策
実は、飛行機事故の生存者の多くは「運が良かった」のではなく、「ちゃんと準備していた」というケースが多いんです。
対策①:離着陸時は靴を履いておく
「魔の11分の法則」をご存知ですか?
- 離陸直後の3分間
- 着陸前の8分間
飛行機事故の多くが、このタイミングに集中しています。
万が一の避難では、ガラス片・機体の金属・炎で足をケガする危険があるため、離着陸時は必ず靴を履いておきましょう。
対策②:安全ビデオと避難経路の確認
「安全ビデオって毎回同じだし、見なくてもいいかな」って思っていませんか?
実は、飛行機によって非常口の数や場所、救命胴衣の収納位置、避難方法・ドアの開け方も異なるんです。
- 自分の席から非常口までの経路
- 救命胴衣の位置
- 座席から非常口まで何列あるかを数える
事故で機内に煙が充満すると、視界がほぼゼロになります。
そんな時、どこに非常口があるのか、「○列進めばドアがある」とわかっていれば、パニック状態でも落ち着いて移動できます。
安全のしおりやビデオなどでしっかりと確認しておきましょう。
非常口は最低2か所は確認しておきましょう!

対策④:避難時は絶対に荷物を持たない!
先ほど少し触れましたが、事項発生時には90秒以内に機内から脱出する必要があります。
荷物を取るだけで脱出時間が数倍に延び、さらに荷物が通路や出口に引っかかると他の人まで逃げられなくなります。
命を守るためには、本当に何もかも置いていく覚悟が大事です。
どうしても心配な場合は、普段から貴重品を身に着けておく(ポケットに入れる、首から下げるなど)ことで、「取りに行く」行動を避けられます。
ただし、脱出時に引っかからないよう注意が必要です。
対策④:クルーを信じること
客室乗務員の本当の役割は、緊急時に乗客を守り、誘導することです。
客室乗務員は、定期的に以下の厳しい訓練を受けています。
- 避難訓練
- 火災対応訓練
- 応急処置研修
だからこそ、もしものときは乗務員の指示に従うことが、最も確実な安全対策になります。
心配なことがあったらCAに声をかけてくださいね。
この記事のまとめ
この記事では、飛行機で安全な席について解説してきました。
絶対に安全な席はないというのが答えですが、後方席の中央席や非常口から5列以内の通路側の席が生存率が高いというデータも出ています。
飛行機は世界で最も安全な乗り物ですが、ちょっとした準備でより安心して乗ることができます。
日頃から飛行機に乗ったら安全ビデオを見たり避難経路を確認したりすることで、万が一の備えにつながります。
元CAとして、飛行機をもっと安心して乗っていただけるよう、これからも正しい情報をお伝えしていきます。
どうか、あなたの空の旅が安心で楽しいものになりますように。